CBM(Contrary Body Movement, コントラリー・ボディ・ムーブメント)は、ボールルームダンステクニック第5版では、以下のように翻訳されています。
 
ボディ・アクションである。前方または後方に動いている足の方向に体の反対側が回転すること。通常回転を起こすとき。
 
この翻訳文がCBMを正しく理解するうえで妨げになっている可能性があります。

「体」とはどこを指すのか?

まず、「体」というのはどこを指すのかということです。

 

なぜこの翻訳書で、他の個所のようにボディと書かずにわざわざ「体」と訳されたのかはわかりませんが、この「体」とは、英語から理解するダンス用語ボディ で説明をしたボディつまり、頭と四肢以外のボディのことです。

 

CMBについては、100年前にイングリッシュスタイルのボールルームダンスを標準化した委員会の一員であるビクター・シルベスターの著書「Theory and Technique of Ballroom Dancing」(1932年出版)では、もっとわかりやすく、下記のように定義しています。

 

It is turning the opposite hip and shoulder towards the leg that you are stepping with.
CBMとは踏み出しつつある脚のほうへ反対側の腰と肩を向けることである。If you took a step forward with your left foot, your right hip and shoulder should be forward and vice versa.
もし左足で前進した場合は、右腰と肩が前進しなければならない。以下同様
このように、bodyではなく、hip (腰)およびshoulder (肩)という言葉を使っています。
英文で書かれたインターネット上での定義でも、私が調べた範囲では、必ずhip と shoulderという言葉を使っています。
注書きでもいいからこういった説明を追加すればわかりやすくなると思います。
 
さらに、上記の委員会の一員だったイブ・ティンゲート-スミスは著書「The Text Book of Modern Ballroom Dancing」(1933年出版)では、CBMについてよくある誤りとして以下のように補足しています。

 

The common faults in C.B.M are :-
CBMにおいてよくある誤りは(a) Turning the shoulders only with a twist at the waist instead of shoulder and hip together with the twist at the hip joint.
股関節のところのひねりで肩と腰を一緒に向きを変える代わりに、ウエスト(胴のくびれ)のところのひねりだけで肩の向きを変える

「Turn」を「回転」と訳すことについて

さて、もっと問題なのは、ボールルームダンステクニックの訳本では、turn という言葉に対して、「回転」という言葉を当てはめています。

 

しかし、日本語の「回転」は、辞書で調べると、「物や体が一つの軸や点を中心にして回ること。」(明鏡国語辞典より引用)となっています。

 

それに対して、turn という言葉の本来の概念は、回転ではなく、「ものや体の向きを変える」といった意味であり、英語では rotate という単語のほうが軸や点を中心にして回るという意味なので、より「回転」という言葉に合います。以下に英英辞書から引用します。

 

Rotate
1 When something rotates or when you rotate it, it turns with a circular movement.

 

では、なぜCBMを説明するのに回転という言葉を使うと変かというと、回転と言われると、どうしても背骨を回転軸としてボディを回転させ、胸を回したくなるのですが、男子女子がホールドした状態で、CBMの態勢を取ろうとすると以下のような問題が出てきます。

 

  • 男子だけ(女子だけ)CBMの態勢を取るステップでは、相手をワイパーのように振り回してしまう
  • 男子女子両方がCBMの態勢を取るステップでは、それぞれ同時に背骨を回転軸として回転することは不可能
実際はCBMにおいては、胸骨は回旋させず(胸は回さず)、それぞれの肩を別々に、出したり引いたりすることにより、上記のような問題はなくなります。
 
というのは、(図1)のように、上腕の骨と肩甲骨は肋骨につながっているのではなく、胸骨-胸鎖関節-鎖骨-肩関節-肩甲骨/上腕というように、胸骨1点でつながっているので、胸鎖関節と肩関節を使うことによりそれが可能になるからです。
 
腰 はどうかというと、(図2)のように、腰の中の骨盤は腰椎につながっていますが、骨盤は左右に分かれていませんので、腰の向きを変えるためには腰椎を回旋する必要があります。しかし、腰椎の回旋の可動域は角度にしてせいぜいプラスマイナス5度くらいですが、それに対して股関節はもっと大きな自由度を持っていますから、大腿骨の上部の逆さL字型の部分を股関節のところで前後に動かすことにより、全体として片側の腰だけでも前後に動かすことが可能です。

 

(図1)
肩甲骨 (前面斜め上).JPG

 

(図2)
股関節 (前面).JPG

 

(図3)
股関節 (斜め前面).JPG

 

 tamaの結論

CBMとは、普通に歩くのと同様に、背骨を回旋せず(胸骨を回さず)、前進する(あるいは後退する)足と反対側の肩(肩甲骨)と腰(大腿骨の上部)を前に出す(あるいは後ろに引く)ことである。
 
また言わずもがなであるが、バランスを取るために、前進する場合は、前進する足と同じ側の肩と腰は後ろに引かれる。後退する場合はその逆。
 
また、サイドリードにおいても同様に、背骨を回旋せず(胸骨を回さず)、前進する(あるいは後退する)足と同じ側の肩(肩甲骨)と腰(大腿骨の上部)を前に出す(あるいは後ろに引く)ことが可能になります。
 
ボルテクのCBMという用語を、英語の原文の意味を考慮して私なりに説明をするならば以下のようになると思います。

 

ボディ・アクションである。前方または後方に動いている足の方向に体の反対側を先行させること。
通常カップルが一体となって回転を起こすとき。

 CBMに関する参考情報

「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」

 

ボールルームテクニックのまえがきを書いたビル・アービンMBEが教えていたことをまとめた本の翻訳書「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」(白夜書房)の79ページでは以下のように書いています。

 

引用始め————————————————————————————

 

コントラリー・ボディ・ムーブメント(CBM)は、とても重要な問題ですが、それにもかかわらず、これほど誤った理解のされ方をしている用語はないでしょう。

 

普通に歩いている所を想像すると、スタンディング・フットとは反対の体側が自然に振れていくのがわかりますが、実はこれがCBMで、実際は大変自然な動きなのです。
 
正しいタイミングで回転ができるようになったら、もはや、CBMについてお話する必要はありませんが、残念なことに、この最も自然に起こるともいうべきCBMをオーバーに使おうとしたり、分割して使おうとしたり、あるいは、そのどちらもやろうとすると、バランスのとれた動きができるどころか、壊滅的な結果が待っているだけです。
 
その原因は、ヘッド・ウェイトがスタンディングフットから外れ、そのために、ヘッド・ウェイトとスタンディング・フットとのコネクションが失われてしまうからなのです。
 
男性がナチュラル・ターンの1~3歩の後の後退ステップで、誤ったCBMの使い方をするのは冒険的ではありますが、二人の形は、全く望ましくないものになってしまいます。

 

引用終り————————————————————————————

 

「WDSF Technique Books」Waltz

 

ボールルームダンステクニックにおけるCBMという用語は、上記で説明したように、歴史的には以下の通りです。
 
「CBMとは、普通に歩くのと同様に、背骨を回旋せず(胸骨を回さず)、前進する(あるいは後退する)足と反対側の肩(肩甲骨)と腰(大腿骨の上部)を前に出す(あるいは後ろに引く)ことである。」
 
しかし、2012年にWDSFが出版したテクニックブックでは、CBMという独立した用語はなくなりました。
 
その代わり、腰と肩の角度を示すRotationという用語が新しく付け加えられ、そこの一部として残るのみとなりました。
 
以下を参照ください。