WDSFのワルツ・ブックやスローフォックス・ブックなどのライズ&フォールの欄を見ると、たとえば、ナチュラル・スピン・ターンのステップ1では、レッグ・ロアーから始め、ステップ1が完了してステップ2に入ると同時にレッグ・ライズとフット・ライズを始めるように書かれています。なお、ボルテクおよび、和訳されたWDSFの教本では、「ステップ1の終わりでライズ」と訳されているかと思います。この和訳では、「ステップ1が完了する前にライズ」するように解釈する方が大半だと思います。しかしそれは不適切な翻訳による誤解だということは、「ライズ&フォールその1」で末に説明しました。。
それよりも注意していただきたいのは、ボルテク(ないし、その原書のBallroom Technique)のステップ1にはロアーから始まるのでなく「ステップ1の終わりでライズ」と書かれていることです。
21世紀の現代において、大多数の日本人ダンサーの方々は、上記のステップ1では、かならずレッグ・ロアーから始めておられると思います。もう少し、詳しく言うと、フットによるライズ&フォールは、かならずヒールを上げるフット・ライズが先に行われてからヒールを下げるフット・ロアーが行われるのに対して、レッグによるライズ&フォールは、かならず最初に膝を曲げるレッグ・ロアーが行われてから膝を伸ばすレッグ・ライズが行われるということです。このことを考慮すれば、ボルテクのステップ1に「ステップ1の終わりでライズ」と書かれているということは、ボルテクのライズ&フォールにはレッグ・ロアーは含まれておらず、その結果としてレッグ・ライズも含まれていないことを意味します。
この結論は、競技ダンス一辺倒の日本人ダンサーには間違いだと思われるかもしれません。しかし、そのことはアレックス・ムーアMBEの著書の Ballroom Dancing の Rise and Fall の定義でも膝を曲げることによるロアーは含まれていませんし、何よりも以下の動画で紹介しているアレックス・ムーアMBEの模範演技の動画や当時の著名なダンス教師の動画をみればわかるように、現代のような膝を大きく曲げるムーブメントは皆無です。
http://dancepedia.info/top/dance-movies/couples/ballroom-dance/alex-moore/
http://dancepedia.info/top/bibliography/british-pathe/
ですから、Ballroom Technique が書かれたころのおとなしい動きのダンスならば、ボルテクの記載は正確で十分役に立つだろうということは否定はしません。しかし、大きなムーブメントを行う今の競技ダンスを踊ろうとするならば、今のボルテクの説明では不十分なところがあると思わざるを得ません。