この連載ではダンス教本に関わる誤った理解とその原因などについて述べていこうと思います。
なお「ダンス教本を過信しないで!」という意味は、「ダンス教本に間違っている個所がある」ということを言おうとしているのではなく、この記事をお読みになる方とともにお互いに研究したいという願いを込めて書いています。
ボルテクやWDSFなどのダンス教本を表面的に理解するのではなく、現代の優れたダンサーの演技や、レクチャーなどとも比較しながら、もっと深く掘り下げ研究すべきである
なお、ボルテクの原著である ISTDのBallroom Technique が1982年以降まったく改定されていないため、どうしてもボルテクに関して私自身が気がついた問題点に集中してしまいます。
その問題点のひとつなのですが、とくにタンゴ以外のスイングダンス(ワルツ、フォックストロット、クイックステップなど)で実測すると明らかな、音楽のビートとステップのタイミングの合わせかたがずれている表記を引きずっているという問題があります。この問題点はWDSFの教本においても解決されていません。
ボルテク自身はまだ指導員資格試験のテキストとして使われていると聞いていますし、WDCがその原著のBallroom Technique を2018年のスタンダード種目のテキストとして指定していることをWDCのホームページで確認しています。しかし一方では、同じWDCのサイトの投稿欄に数年前にプロ指導員の資格審査員の方がBallroom Techniqueについて苦言を呈しています。その投稿を対訳しましたので以下をご覧ください。
http://dancepedia.info/top/wdc-education/mechanics/the-dumbing-down-of-technique/
彼の投稿は以下のようなものです。
近年プロの志願者のテクニックに関する知識が、はるかに低いレベルまで落ちたことを憂いており、その原因として以下のことを挙げています。ISTDは、アレックス・ムーアMBEの生前は、 Ballroom Technique と、アレックス・ムーアMBEの著書である Ballroom Dancing の両方の使用を推奨していた。しかし、アレックス・ムーアMBEの死後は、ISTDは、Ballroom Technique しか推奨しなくなった。
私も、Ballroom Dancing を持っており、このサイトに対訳をつけて掲載していますが、一例をあげるならば、この書籍にはすべてのフィガーについての、男子と女子の足型図が掲載されています。足形図があるとないとでは理解度に大きな違いがあるだろうということは想像に難くありません。つまり、ボルテクをよりよく理解するためには、Ballroom Dancing に代わる何かが必要だということです。
この記事を書いた時点では Ballroom Dancing の第4版しか持っていなかったのですが、後で、The Ballroom Technique の最後の10版(1982年)のあとにA & C Blackという出版社で出版された、Ballroom Dancing 第10版(2002年)を入手しました。その書籍をISTDがj推奨していれば、上記の投稿のような批判を受けることもなかったかもしれません。
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