ボルテク通りには踊れない?
あるSNSで以下のようなことをお聞きしました。
日本の指導者はボルテク通りには踊れないと主張しています。
それはダンスの一歩を足を揃えたところから揃えたときと解釈しているからであり、ダンスの一歩を足が開いたところから開いたところまでと解釈し、ボルテクを読み直してみると、ボルテク通りに踊れることが実証できるはずです。
海外に長期留学したプロが帰国後必ず言う言葉がこれです。
最初お聞きした時は、その日本の指導者が言われているという「ボルテク通りには踊れない」ことがまず理解できませんでした。
また、長期留学したプロが言われているという「ダンスの一歩を足が開いたところから開いたところまでと解釈すれば、ボルテク通りに踊れる」と言ったということも、当たり前すぎて、もう一つ腑に落ちなかったからです。(もちろん上のお聞きしたことが実際にご本人たちがそうおっしゃったことならば)
そこでボルテクを読み返してみると、各チャートの下の説明では1~3歩などと書かれています。
また、英語の「step」も同様に、片足の1歩の動きを表す場合と、Step by step という表現のように、段階といった意味を表す場合があります。
ですから、ボルテクその日本の指導者の方や、海外に長期留学したプロの方が「ステップ」を、1歩目とか2歩目というように理解したのも無理はありません。
また、アレックス・ムーアが自著の「Ballroom Dancing」のDefinitions of Technical Termsの中で以下のように書いているように、英語国民でさえ誤解する可能性があるわけですから、日本人にとってはそのように理解するのはやむを得ないかもしれません。
Step.*
This usually refers to one movement of the foot, although from a “time value” point of view this is incorrect. In the case of a walk forward or backward for instance, the time value of the step is not completed until the moving foot is drawn up to the foot supporting the weight, ready to commence another step. Thus, when instructed to rise at the end of a step the dancer should not commence to rise until the moving foot is passing the foot supporting the weight of the body.
ステップ
これは、一般的には、片足の1回の動きを指しますが、「Time Value」の観点からは、これは正しくありません。 例えば前進または後退ウォークをする場合には、ウォークの時間値は、ムービング・フットが体重を支えているサポーティング・フットまで引き寄せられ、次のウォークを開始する準備が整うまで完了しません。 したがって、あるステップが終わったときライズするように指示されている場合、ダンサーは、ムービング・フットがサポーティング・フットを通過するまでライズを開始すべきではありません。
しかし、原文の「STEP」は片足の1回の動きを表す「歩」という意味ではなくて、「段階」と表現されるような意味で使われています。
ボルテクのチャートの1列目の「ステップ」が「歩」の意味ではないという根拠
下に、ボルテクのワルツのナチュラル・スピン・ターンのチャートを示します。
これを例にして、チャートの1列目の「ステップ」が「歩」の意味ではないという根拠について説明します。
上に示したボルテクの男子のステップ1の開始からステップ2の開始までとその前後のステップの分解画像を下に示します。
これで、わかるように各ステップは、途中で中間バランスの状態を経由しその状態の前後でムービング・フットとサポーティング・フットの役割りが入れ替わります。
言い換えるならば、一つのステップは、そのステップの前半と後半では異なる足の半歩ずつで移動しているわけです。
これが、「ステップ」は「歩」ではないということの根拠です。
予備ステップ開始
男子は両足がそろえた状態にあり、右足をサポーティング・フットとして、左足をムービング・フットにして前進しようとしている。
予備ステップ(中間バランス)
男子はムービング・フットだった左足が前、サポーティング・フットだった右足が後ろになった中間バランスの状態にあり、そこからは、左足をサポーティング・フットにして、右足をムービング・フットとして前進しようとしている。
ステップ1開始
男子は両足をそろえた状態にあり、左足はサポーティング・フットのままで、右足をムービング・フットとして継続前進しようとしている。
ステップ1(中間バランス)
男子はムービング・フットだった右足が前、サポーティング・フットだった左足が後ろになった中間バランスの状態にあり、そこからは、右足をサポーティング・フットにして、左足をムービング・フットとして前進しようとしている。
ステップ2開始
男子は両足をそろえた状態にあり、右足はサポーティング・フットのままで、左足をムービング・フットとして継続前進しようとしている。
ステップ2(中間バランス)
男子はムービング・フットだった左足が前、サポーティング・フットだった右足が後ろになった中間バランスの状態にあり、そこからは、左足をサポーティング・フットにして、右足をムービング・フットとして前進しようとしている。