ビル・アービンは以下のようにお弟子さんに言っていたそうです。

 

バランスのコントロール!

筋肉のコントロール!

タイミングのコントロール!

ダンスにおけるあらゆることが、この3つに含まれています。

フィードバックコントロール
 
制御工学の世界では、これらのコントロールをフィードバックコントロールということがあります。
 
フィードバックコントロールとは、たとえば、温度を一定に保つために温度を検出しながら火力を調整するといったことです。
 
これらを実現するためには温度を感知するセンサー、火力を調整するボイラー、そしてそれらを制御するシステムが必要になります。
 
ダンスをする場合も、ビル・アービンが言っていた3つの要素をコントロールする場合、脳や神経系がそれらの動きを制御する司令塔、筋肉や骨格などはそれらを調整する役割を果たしているのは容易に推測がつきます。
 
しかし、センサーの役割をはたすのは何かと聞かれた場合、正確に答えられる人はあまり多くないと思います。
 
生理学的にはセンサーの役割をはたすのは、感覚受容器と呼ばれる組織です。
 
その一部は皮膚表面に分布しており、皮膚感覚受容器と呼ばれ、それ以外は体内に分布しており、深部感覚受容器と呼ばれます。
 
それらの皮膚感覚受容器は、触れたものの形状を認識したり温度を感ずることなどが可能ですが、反応速度が深部感覚受容器に比較してずっと遅く、また少し経つと反応しなくなってしまいますので、ダンスにはあまり役に立っていません。
 
ダンスをする場合、決定的に重要なのは深部感覚受容器です。
 
人間には目を閉じていても手足の位置やその動きがわかりますが、それが深部感覚のおかげによるものです。
 
これらを感じ取る感覚受容器は、皮下、筋肉、腱、筋膜、骨膜、関節の中に広く分布しており、人間の脳はそれらからの刺激を総合して深部感覚を構成しています。
 
深部感覚の1つに運動感覚(Kinesthesia)というものがあり、以下のように分類されています。
 
■ 位置感(Sensation of Position)
   視覚や皮膚感覚がなくても、四肢や身体部位の相対的位置関係がわかる
 
■ 運動感(Sensation of Movement)
   関節が動かされるとその動きがわかる
 
■ 抵抗感(Sensation of Resistance)
   物体を押す時の筋の張力からその物体の硬さがわかる
 
■ 重量感(Sensation of Weight)
   物体を持つとき要する力からその物体の重さがわかる
 
踊るときは、自分だけでなくカップル全体に対して、ベストのポスチャーを記憶したり、ムーブメントをコントロールしたり、リード&フォローするために、自分の深部感覚を駆使してしているわけです。
 
それらを意識してダンスをすることが、これらの感覚を鋭敏にする訓練になります。
 
一方、過度にホールドを固めてしまうと、鎧を身につけたようなもので、体表面に力が加えられても深部感覚受容器まで力が伝わらず、いわばパートナーの声が聞こえないよう耳栓をしてしまうことになります。
 
ダンスはボディを経由した洗練されたコミュニケーションだという人もいますが、そうできるようになるためにも、過度に固めたホールドは慎むべきだと思います。

参考情報

● 小生理学書 (真島英信著、金芳堂)

● 深部感覚を感じ取り、リード&フォローに役立てる練習について、米国のダンスサイトの記事を以前翻訳しました。
  こちらをクリックしてください。→ 6.0 リードとフォローの感覚を磨く練習

● リード&フォローとはリーダーからフォロアーへの一方通行の指示だと勘違いしている輩のためのコミュニケーションについて、海外のダンスサイトの記事を以前翻訳しました。
  こちらをクリックしてください。 → リードとフォローは双方向