社交ダンスに関して時々取り沙汰される法律が風俗営業法です。
わたしは、風俗営業法に興味はなかったのですが、あるダンスサイトで、社交ダンスと風俗営業法との関係について議論があったので、好奇心をかき立てられ、これを機会に、一度調べてみようと思いました。例によって、又聞きや思い込みを排除するために、風俗営業法、政省令、通達などを探して引用しました。
なおわたしは、薬事法(医療機器のみ)や環境関連法については知識と経験を持ち合わせていますが、風俗営業取締法については素人ですので、法律の解釈に万が一間違いがあっても責任は持ちません^^
引用した法律等
- 資料1 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
- 資料2 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令
- 資料3 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則
- 資料4 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について 平成30年1月30日付け
ダンスと風俗営業法との関係に関する他の解釈
- ボールルームダンスの資料室(ダンス関係法令)
このサイトでは私とは異なる解釈を掲載していましたが、調べたところ2018年12月時点では公開されていませんでした。
Q1
日本で社交ダンスに関係した法律にはなにがありますか?
A1
以下の2つが関係します。著作権法については別の機会に調べてみようと思います。
風俗営業取締法
著作権法
Q2
風俗営業とはどんなものを指すのですか?
A2
風俗営業とは、風俗営業法、正式には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」の(用語の意義)第二条で定められています。
この第二条は全部で八項あり、各号で風俗営業とは何を指すかが定められています。いずれの号でも「...他設備を設けて...」と定められていますので、設備を持たない営業は風俗営業法の適用はされません。
(用語の意義)第二条はここをクリック
第二条 この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一 キヤバレーその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客の接待をして客に飲食をさせる営業
二 待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)
三 ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(第一号に該当する営業を除く。)
四 ダンスホールその他設備を設けて客にダンスをさせる営業(第一号若しくは前号に該当する営業又は客にダンスを教授するための営業のうちダンスを教授する者(政令で定めるダンスの教授に関する講習を受けその課程を修了した者その他ダンスを正規に教授する能力を有する者として政令で定める者に限る。)が客にダンスを教授する場合にのみ客にダンスをさせる営業を除く。)
五 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた客席における照度を十ルクス以下として営むもの(第一号から第三号までに掲げる営業として営むものを除く。)
六 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの
七 まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業
八 スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)
2 この法律において「風俗営業者」とは、次条第一項の許可又は第七条第一項、第七条の二第一項若しくは第七条の三第一項の承認を受けて風俗営業を営む者をいう。
3 この法律において「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう。
4 この法律において「接待飲食等営業」とは、第一項第一号から第六号までのいずれかに該当する営業をいう。
5 この法律において「性風俗関連特殊営業」とは、店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業、映像送信型性風俗特殊営業、店舗型電話異性紹介営業及び無店舗型電話異性紹介営業をいう。
6 この法律において「店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一 浴場業(公衆浴場法(昭和二十三年法律第百三十九号)第一条第一項に規定する公衆浴場を業として経営することをいう。)の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業
二 個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業(前号に該当する営業を除く。)
三 専ら、性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行その他の善良の風俗又は少年の健全な育成に与える影響が著しい興行の用に供する興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条第一項に規定するものをいう。)として政令で定めるものを経営する営業
四 専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む。以下この条において同じ。)の用に供する政令で定める施設(政令で定める構造又は設備を有する個室を設けるものに限る。)を設け、当該施設を当該宿泊に利用させる営業
五 店舗を設けて、専ら、性的好奇心をそそる写真、ビデオテープその他の物品で政令で定めるものを販売し、又は貸し付ける営業
六 前各号に掲げるもののほか、店舗を設けて営む性風俗に関する営業で、善良の風俗、清浄な風俗環境又は少年の健全な育成に与える影響が著しい営業として政令で定めるもの
7 この法律において「無店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一 人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの
二 電話その他の国家公安委員会規則で定める方法による客の依頼を受けて、専ら、前項第五号の政令で定める物品を販売し、又は貸し付ける営業で、当該物品を配達し、又は配達させることにより営むもの
8 この法律において「映像送信型性風俗特殊営業」とは、専ら、性的好奇心をそそるため性的な行為を表す場面又は衣服を脱いだ人の姿態の映像を見せる営業で、電気通信設備を用いてその客に当該映像を伝達すること(放送又は有線放送に該当するものを除く。)により営むものをいう。
9 この法律において「店舗型電話異性紹介営業」とは、店舗を設けて、専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際(会話を含む。次項において同じ。)を希望する者に対し、会話(伝言のやり取りを含むものとし、音声によるものに限る。以下同じ。)の機会を提供することにより異性を紹介する営業で、その一方の者からの電話による会話の申込みを電気通信設備を用いて当該店舗内に立ち入らせた他の一方の者に取り次ぐことによつて営むもの(その一方の者が当該営業に従事する者である場合におけるものを含む。)をいう。
10 この法律において「無店舗型電話異性紹介営業」とは、専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際を希望する者に対し、会話の機会を提供することにより異性を紹介する営業で、その一方の者からの電話による会話の申込みを電気通信設備を用いて他の一方の者に取り次ぐことによつて営むもの(その一方の者が当該営業に従事する者である場合におけるものを含むものとし、前項に該当するものを除く。)をいう。
11 この法律において「接客業務受託営業」とは、専ら、次に掲げる営業を営む者から委託を受けて当該営業の営業所において客に接する業務の一部を行うこと(当該業務の一部に従事する者が委託を受けた者及び当該営業を営む者の指揮命令を受ける場合を含む。)を内容とする営業をいう。
一 接待飲食等営業
二 店舗型性風俗特殊営業
三 飲食店営業(設備を設けて客に飲食をさせる営業で食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)第五十二条第一項の許可を受けて営むものをいい、接待飲食等営業又は店舗型性風俗特殊営業に該当するものを除く。以下同じ。)のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業(営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むものを除く。以下「酒類提供飲食店営業」という。)で、日出時から午後十時までの時間においてのみ営むもの以外のもの
Q3
ダンスに関連して風俗営業法の適用を受ける営業にはどんなものがあるのですか?
A3
風俗営業法の適用を受ける営業には以下の3つがあります。
キャバレー
ダンス飲食店
ダンスホール等
それぞれの定義は、以下のように(用語の意義)第二条で定められています。
営業の種類 | 適用条項 | 定義 |
キャバレー | (用語の意義)第二条一号 | キヤバレーその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客の接待をして客に飲食をさせる営業 |
ダンス飲食店 | (用語の意義)第二条三号 | ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(第一号に該当する営業を除く。) |
ダンスホール等 | (用語の意義)第二条四号 | ダンスホールその他設備を設けて客にダンスをさせる営業(第一号若しくは前号に該当する営業又は客にダンスを教授するための営業のうちダンスを教授する者(政令で定めるダンスの教授に関する講習を受けその課程を修了した者その他ダンスを正規に教授する能力を有する者として政令で定める者に限る。)が客にダンスを教授する場合にのみ客にダンスをさせる営業を除く。) |
tamaの解釈
ホテルがダンスの催し物のために設備を貸す場合は、上記の「ダンスホールその他設備を設けて客にダンスをさせる営業」に相当します。
なお、上記のいずれも、「営業のための設備を設ける」ということが条件になっていますので、ホテルの会場や、公民館で、不定期に場所を借りてダンスパーティを催す場合は、ダンスパーティの主催者は、風俗営業法の適用を受けないと思われます。ただし、自前で設備を設けなくても、賃貸契約でダンスフロアを借りて営業をする場合は、おそらく「営業のための設備を設ける」ことに相当すると思われます。
Q4
第二条の四号のカッコの中の除外規定がよくわかりません。
もう少し詳しく説明してください。
A4
この除外規定は、客がダンスを学ぶためにダンス教習所に通ってダンス教師に教えを乞うのは風俗営業ではないという考え方を盛り込むために、法改正されたものです。
回りくどい言い方をしていますが、単純に言うと、ダンス教師が客に教える場合だけは風俗営業とは扱わないけれど、それ以外客が踊る場合は風俗営業法と扱うよというわけです。
tamaの解釈
ですから、客が一人で踊ること、ないしカップルで踊ることを認めた営業形態をとっているならば、そこのダンスホールでの営業は風俗営業だということになります。
Q5
ダンス教師とは、この第二条四号でいう、ダンスを教授する者のことだと思いますが、どんな資格が必要なのでしょうか?
A5
法律の二条の四号では、以下のように書いています。つまり「法律の下にぶら下がっている政令に詳しいことを決めていますよ」ということです。
ダンスを教授する者(政令で定めるダンスの教授に関する講習を受けその課程を修了した者その他ダンスを正規に教授する能力を有する者として政令で定める者に限る。)
「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令」(以下施行令)がその政令で、以下のように定められています。
つまり以下の2つの条件のどちらかを満足することが教授する者の資格ということになります。
法で定める ダンスを教授する者の資格 |
施行令で定める適用条項 | 資格条件 |
政令で定めるダンスの教授に関する講習を受けその課程を修了した者 | 施行令第一条 | 社団法人全日本ダンス協会連合会(全ダ連)又は財団法人日本ボールルームダンス連盟(JBDF)が行う講習であって、国家公安委員会が指定したもの |
その他ダンスを正規に教授する能力を有する者として政令で定める者 | 施行令第二条 | 全ダ連又はJBDFが前条に規定する講習の課程を修了した者と同等の能力を有する者として国家公安委員会規則で定めるところにより国家公安委員会に推薦した者 |
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令第二条全文はここをクリック
(法第二条第一項第四号の政令で定めるダンスの教授に関する講習)
第一条 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 (以下「法」という。)第二条第一項第四号 の政令で定めるダンスの教授に関する講習は、社団法人全日本ダンス協会連合会(昭和六十年五月三十日に社団法人全日本ダンス協会連合会という名称で設立された法人をいう。次条において同じ。)又は財団法人日本ボールルームダンス連盟(平成四年三月二十四日に財団法人日本ボールルームダンス連盟という名称で設立された法人をいう。次条において同じ。)がダンスの教授に関する技能及び知識に関して行う講習であつて、ダンスを有償で教授する能力を有する者を養成することができるものとして国家公安委員会が指定するものとする。
(法第二条第一項第四号 の政令で定める者)
第一条の二 法第二条第一項第四号 の政令で定める者は、社団法人全日本ダンス協会連合会又は財団法人日本ボールルームダンス連盟が前条に規定する講習の課程を修了した者と同等の能力を有する者として国家公安委員会規則で定めるところにより国家公安委員会に推薦した者とする。
Q6
風俗営業法の適用を受ける場合でも、ダンスを教える場合は必ずこの資格を持っていなければならないということでしょうか。
A6
違います。この資格は、あくまで、ダンスホールその他設備を設け客にダンスを教授するという営業を行って、なおかつ風俗営業法の規制を受けないための条件です。したがって、ダンスホールその他設備を設け客にダンスを教授するという営業を行う場合であったとしても、風俗営業法の規制を順守するのであれば、この資格は不要です。
tamaの解釈
ですから、ダンスパブなどでは風俗営業の認可をうけているでしょうから、マスターがお客に教える場合でも、この資格は不要でしょう。
あるいは東京のダンスホール新世紀や東宝ダンスホールなどでは、客同士がダンスをするので、風俗営業法の認可をうけて営業されているはずですが、そこでダンスを教えていらっしゃるダンス教師の方にはこの資格は必須ではありません。
また、自分でダンスホールその他設備を設けずに、ダンス練習場や、ダンスパーティで、営業としてダンスを教えたとしても、風俗営業法に違反しているわけではありません。ただし、社会人のマナーとしては、ダンスパーティの会場で、教えるために他の人達の迷惑になるような行為をすることは慎むべきですが。
Q7
風俗営業法の適用を受けないダンス教習所でダンスを教える場合は、必ずこの資格を持っていなければならないということでしょうね?
A7
必ずしもそうではありません。資料4の第2項では以下のように書かれています。
したがって、資格を持ったダンス教師が客に教えるのを補助する場合は、アシスタントは資格をもっていなくても差し支えありません。
第2 客にダンスをさせる営業について(法第2条第1項第4号関係)
「ダンスを教授する者が客にダンスを教授する場合にのみ客にダンスをさせる営業」とは、常態としてダンスを教授する者の指導及び管理の下に客にダンスをさせる営業を意味し、客がダンスをしている場において、ダンスを教授する者が現に存在し、客に個別に指導することが可能な状態にある必要がある。したがって、例えば、ダンス教師がビデオ等により、又はテレビ等を介して客にダンスを指導する場合はこれに当たらない。
なお、令第1条及び第1条の2で定める要件を満たしていないダンス教師が当該要件を満たしているダンス教師によるダンスの教授を補助することは差し支えない。
Q8
資格を持ったダンス教師が一人で、アシスタントを使って、複数のダンス教習所で同時に客にダンスを教授することは差し支えありませんか?
A8
資料4では以下のように書かれています。つまり資格を持ったダンス教師が、教えているところに存在している必要があります。
上記の場合、そのダンス教師が同時に複数教習所で教授することはできませんので、風俗営業法の許可を取得する必要があります。
第2 客にダンスをさせる営業について(法第2条第1項第4号関係)
「ダンスを教授する者が客にダンスを教授する場合にのみ客にダンスをさせる営業」とは、常態としてダンスを教授する者の指導及び管理の下に客にダンスをさせる営業を意味し、客がダンスをしている場において、ダンスを教授する者が現に存在し、客に個別に指導することが可能な状態にある必要がある。したがって、例えば、ダンス教師がビデオ等により、又はテレビ等を介して客にダンスを指導する場合はこれに当たらない。
なお、令第1条及び第1条の2で定める要件を満たしていないダンス教師が当該要件を満たしているダンス教師によるダンスの教授を補助することは差し支えない。
Q9
JBDFやJDSFでは指導員制度というものがあって、アマチュアでもなれると聞いていますが、それらの指導員制度の資格要件と、風俗営業法で定める、ダンスを教授する者の資格要件はどういう関係があるのですか。
A9
指導員はあくまで、それぞれの団体がそれぞれの制度に基づいて与える資格ですが、風俗営業法で定めるダンスを教授する者の資格要件とは無関係です。
指導員は、それぞれの団体の制度規定にしたがって行動をしなければなりませんし、指導した場合の報酬なども規定に従がって受け取ることが要求されます。規定に違反した場合は、その指導員の資格を剥奪されるということになりますが、その場合でも風俗営業法に違反したというわけではありません。