Last Updated on 2022年3月2日 by tama
ボールルームダンステクニックでは、様々なところに turn(ターン)という言葉が使われています。
そして、ナチュラル・スピン・ターンなどのように用語の一部として使われている場合を除いて、「回転」あるいは「回転する」と翻訳されています。
この回転という訳語が、本来の turn の概念から若干ずれているために、ボールルームダンスにおけるボディの使い方を正しく理解するうえで妨げになっている可能性があります。
turn の一般的な意味
まず、日本語の「回転」を国語辞書で調べてみると以下の意味が最初に出てきます。
【回転】
①ある軸を中心としてくるくる回ること
新明解国語辞典(三省堂)より
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【回転】
①物や体が一つの軸や点を中心にして回ること。
明鏡国語辞典(大修館)より
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一方 turn を英英辞書で調べてみると、その基本的な概念を使用頻度の順で引用すると
【Turn】
1. to change in direction or nature (方向を変えるあるいはその性質を変える)
2. your go to do something (何かをする順番)
3. phrasal verbs (句動詞;副詞を伴って様々な意味を表現する
Collins Cobuild Learner’s Dictionaryより
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この第1番目の概念での使い方で最も使用頻度の高いのは以下のものです。
【Turn1】
When you turn or you turn part of your body, you move your body or part of your body so that it is facing in a different or opposite direction.
自分がターンするあるいは自分の体の一部をターンするということは、それが違う方向あるいは反対方向に面するように自分の体あるいは自分の体の一部を動かすということである。
Collins Cobuild Learner’s Dictionaryより
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このように turn という言葉の本来の概念は、回転ではなく、ものや体の向きを変える」といった意味です。
たとえば競泳でプールの端で180度方向を変えることをターンするといいますが、これがもともとの意味で使われている例です。
またturn at the corner (角を曲がる)とは言いますが、rotate at the corner (角で回転する)とは言いません。
ターンという言葉が回転するという意味になるのは回転軸が回転するものないし人の内部にある場合だけです。
なお、英語では spin あるいはrotate という単語のほうが、より日本語の「回転」という言葉に合います。以下に英英辞書から引用します。
【Spin】
1. If something spins, it turns quickly around a central point.
なにかがスピンするならば、その何かが、ある中心点の周りで素早く向きを変えることである。
Collins Cobuild Learner’s Dictionaryより
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【Rotate】
1. When something rotates or when you rotate it, it turns with a circular movement.
何かがローテートするあるいは何かをローテートするとき、それは円を描きながらターンするということである。
Collins Cobuild Learner’s Dictionaryより
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ダンスにおける turn の意味
ボールルームテクニックの翻訳書では、CBMを「ボディ・アクションである。前方または後方に動いている足の方向に体の反対側が回転すること。通常、回転を起こすとき。」と翻訳しています。
しかしこの日本語は変です。
というのは、後者の「回転」をしない場合、つまり「通常」でない場合であっても、前者の「回転」をすることになりますので、同じ「回転」という言葉を使っていても意味が違うと考えなければ、この文章は矛盾することになります。
そこで前者の「回転」はもともとturnという言葉を使っており、後者の「回転」はRotationという言葉を使っていたとすれば辻褄が合います。
具体的には、通常歩行する場合のように、胸骨を左右に振らずに(ネクタイをしている場合は、ネクタイを左右に振らずに)肩甲骨と骨盤を前後に振ることにより、見かけ上ボディが回転しているかのように見えるのがturn、胸骨も一緒に向きを変える場合がRotationだと考えられます。