Last Updated on 2022年3月2日 by tama

ボールルーム・ダンス・テクニック(ボルテク)ではポイズのことを以下のように翻訳しています。
 
ポイズ

●男子

・頭は直立させ真っすぐな姿勢で立つ。
・ボディはウェストで引き締め、
・体重は足のボールの方向へ前方に保ち、
・肩はリラックスさせ、
・-膝はほんのわずかに曲げて保つこと。

●女子

・真っすぐな姿勢で立ち、
・ボディはウェストで引き締め、
・体の上部と頭はわずか後方で少し左側に、
・膝をほんのわずか曲げ、
・体重を足のボールに置く。

出所:ボールルーム・ダンス・テクニック第5版

 

この説明だけを読む限り、ポイズのことを姿勢という意味だと誤解するのは私だけではないと思います。
しかしこれがダンスの姿勢の説明だとしても、なんとなく中途半端ですし、そもそも姿勢に関しては別なポスチャーという言葉も使われています。
 
そこで、語源辞典を含め、いくつかの英英辞書で、Poiseの意味を調べてみました。

 

Poiseの一般的な意味
その中で私がよく使用している辞書の説明を抜き出しました。その他の辞書の説明は、参考として末尾に示しています。
 
つまりポイズの意味というか「良いポイズ」というのは、語源的にはバランスという意味ですが、現代では、単にバランスがとれているだけではなく、静か(calm)で、堂々とした(dignified)、自己統制の効いた(self- controlled)状態にあるということですが、もうひとつ重要なことは、どの瞬間でも動く準備ができている(ready to move at any moment)バランスを保った態勢にあるということですね。

 

Poise

Poise

1. If someone has poise, they are calm, dignified, and self-controlled.
誰かがPoiseの状態にあるとは、かれらが静かで、堂々とした、自己抑制の効いた態度だということである。

2. Poise is a graceful, very controlled way of standing and moving.
Poiseとは立ちかたや動きかたが優雅で非常にコントロールされているということである。

Poised

1. If a part of your body is poised, it is completely still but ready to move at any moment.
体の一部がポイズされているというのは、それが完全に静止しているがいつでも動かせる状態にあるということである。

2. If someone is poised to do something, they are ready to take action at any moment.
誰かが何かをするためにポイズされているというのは、彼らがいつでもアクションをとれる準備ができているということである。

3. If you are poised, you are calm, dignified, and self-controlled.
自分がポイズされているというのは、静かで堂々としていて自己統制の効いた態度だということである。

出所:Collins Cobuild Learner’s Dictionary

 

ダンスにおけるPoiseの意味
元スタンダード世界チャンピオンのルッカ・バリッキは、自身のレクチャーの中でポスチャーとポイズの違いについて、詳しく説明をしています。
→ Technique Lessons by BaricchiのPart2を参照
 
そのポイントを抜き出してみると
 

ポスチャーとポイズは明らかに違った概念です。

「ポイズとはポスチャーの床との関係なのです。」

良いポスチャーだけどポイズが悪いケースがしばしば見かけられます。
この事からもポスチャーとポイズは違うと言う事が御理解いただけると思います。
ポスチャーは筋肉の動きが伴いますが、ポイズは筋肉の動きとは全く関係がなく、足に対するボデイウェイトの位置だと言う事が言えます。
ポイズとはボデイウェイトの位置と足との関係です。
またボディウェイトの角度と床との関係であるとも言えるのです。

二人の体を合わせる事により美しく正しい姿を作る為には良いポスチャーと良いポイズのコンビネイションがとても重要です。

Technique Lessons by Lucca Baricchiより

このように、ポイズとはポスチャー(姿勢)とは密接な関係にあるけれど別物であり、良いポイズをボールルームダンスで実現するための体の使い方の主なポイントを示したものが、最初に紹介したボールルームダンステクニックのポイズの説明だと考えられます。
 
基本的には、体のどこにも余計な力をかけない姿勢で、かつ、いつでもどちらの方向にでも動けるような状態に、体の関節や筋肉を保つことがポイズの条件になります。そこで、その条件とボールルーム・ダンス・テクニックのポイズの説明がどう関連するのか、私なりに説明を加えてみました。

 

■ 真っ直ぐな姿勢で立つ
 
「真っ 直ぐな姿勢」とは何かということについて、いろいろな観点からの解説がなされているので、詳細は省きますが、ポイズの観点から言うと、体の重たい部分すなわち、下半身(腰部)、上半身(胸部)、頭部の各重心が、体重がかかる足の位置(ボール)の真上に来るようにすることで、それらの部分の重量を骨部で支えることができるので、筋肉に余計な力をかけずにすみます。
これが真っ直ぐな姿勢で立つことの意味です。

 

■ ボディはウェストで引き締め
 
ボディがふにゃふにゃだと、バランスを保つのは困難です
「ボディはウェストで引き締め」というのは、インナーマッスルの一つであってウェスト部分をぐるっと取り囲んでいる腹横筋を収縮させる意味ですが、そうすることによりボディに張り(トーン)を持たせることができ、バランスのコントロールがやりやすくなります。
 
よくおへそを引っ込めよとか内臓を肋骨の中にしまい込めとか、聞くことがありますが、それらも同じ意味です。

 

■ 体重を足のボールに置く
 
「体重を足のボールに置く」ということは、ほとんど見た目にはその違いが見えませんが、体重が、今どちらの足のどのあたりにかかっているのかを素早くかつ精度 よく感じ取るとともに、それに応じて、足首やつま先、土踏まずのバネなどを利用して微妙な重心のコントロールを行います。
そうせずに、重心をヒールや足の小指側に近い方に置くとそういうコントロールが困難になります。その理由は足と膝の骨の構造にあります。
 
足の骨を上から見た時は、下図のように、インサイド側の3本の指(親指、人差し指、中指)は足首につながっていますが、アウトサイド側の2本の指(薬指、小指)はかかとの骨につながっています。そのためアウトサイド側に加重がある場合は足首の骨に力が伝わりません。最も強い親指側の拇指球に向けて加重が入れば足首を使えます。
 
足の骨の構造.JPG
 
さらに右膝の骨を前から見た時、下図のように、インサイド側の脛骨は大腿骨につながっていますが、アウトサイド側の腓骨は大腿骨につながってはいません。また脛骨と足首の骨がつながり、腓骨はかかとの骨につながっています。つまり加重は以下のように支えられているわけです。
 
                インサイド側   親指/人差し指/中指 → 足首 → 脛骨 → 大腿骨
 
                アウトサイド側  薬指/小指 → かかとの骨 → 腓骨 → ☓ 大腿骨
 
つまりアウトサイド側に加重がある人は、足首も使えないし、膝も使えないということになります。
 
もう少し詳しく知りたい場合は、身体構造と社交ダンスの記事の、「パート2 人体運動器について」の動画を御覧下さい。
 
膝の骨の構造.JPG

 

■ 膝をほんのわずか曲げ
 
「膝をほんのわずか曲げ」も、ほとんど見た目にはその違いがよく見えませんが、膝をわずか曲げるというのは、膝の屈曲によりバランスをコントロールするために重要なポイントです。
膝を伸ばした状態だとバランスをコントールすることが困難になります。
 
テニスや、卓球、バレーボールなどの球技をやられている方には、以下のようなポイントはそれらの競技でも共通ですので、すぐに理解できるでしょう。
 

資料一覧

 

poise (n.)
early 15c., “weight, quality of being heavy,” later “significance, importance” (mid-15c.), from Old French pois “weight, balance, consideration” (12c., Modern French poids), from Medieval Latin pesum “weight,” from Latin pensum “something weighted or weighed,” (source of Provençal and Catalan pes, Spanish, Portuguese, Italian peso), noun use of neuter past participle of pendere “to weigh” (see pendant).

 

The sense of “steadiness, composure” first recorded 1640s, from notion of being equally weighted on either side (1550s). Meaning “balance” is from 1711; meaning “way in which the body is carried” is from 1770.
poise (v.)
late 14c., “to have a certain weight,” from stressed form of Old French peser “to weigh, be heavy; weigh down, be a burden; worry, be a concern,” from Vulgar Latin *pesare, from Latin pensare “to weigh carefully, weigh out, counter-balance,” frequentative of pendere (past participle pensus) “to weigh” (see pendant). For form evolution from Latin to French, see OED. Meaning “to place in equilibrium” is from 1630s (compare equipoise). Passive sense of “to be ready” (to do something) is from 1932. Related: Poised; poising. In 15c. a poiser was an official who weighed goods.

 

Poise
noun
1Graceful and elegant bearing in a person: poise and good deportment can be cultivated
More example sentencesSynonyms
1.1Composure and dignity of manner: at least he had a moment to think, to recover his poise

 

Collins English Dictionary
poise1 (pɔɪz )
Definitions
noun
1. composure or dignity of manner
2. physical balance or assurance in movement or bearing
3. the state of being balanced or stable; equilibrium; stability
4. the position of hovering
5. suspense or indecision
verb
6. to be or cause to be balanced or suspended
7. (transitive) to hold, as in readiness ⇒ to poise a lance
8. (transitive) a rare word for weigh1
Word Origin
C16: from Old French pois weight, from Latin pēnsum, from pendere to weigh

 

Cambridge Dictionaries Online
English definition of “poise”
poise
noun [U] uk /pɔɪz/ approving us
› calm confidence in a person’s way of behaving, or a quality of grace (= moving in an attractive way) and balance in the way a person holds or moves their body: He looked embarrassed for a moment, then quickly regained his poise. Her confidence and poise show that she is a top model.